2008年5月30日金曜日

クラスター爆弾禁止条約案:ダブリン会議が合意に至る

不発弾となる可能性の高いものを対象に禁じ
不発弾率の低い将来のクラスター爆弾開発の道は
開かれたままとなっている条約案だが
米国などが主張するクラスター爆弾の技術進歩による解決という
考え方にも一応の配慮を見せた上で
既存のクラスター爆弾はほぼすべて禁止されるため
上出来な条約案だといえる。

こういう案ではCCWの再検討会議に交渉の舞台を移して
話し合う余地などもはやない。
日本政府は対応を誤ったと見ていいだろう。

BBCの報道より。

Cluster bomb ban treaty approved
クラスター爆弾禁止条約案の合意に至る


Story from BBC NEWS
http://news.bbc.co.uk/go/pr/fr/-/2/hi/europe/7423714.stm
Published: 2008/05/28 21:44:13GMT
© BBC MMVIII

More than 100 nations have reached an agreement on a treaty which would ban current designs of cluster bombs.
既存のクラスター爆弾を禁止する条約案に100カ国以上が合意した。


Diplomats meeting in Dublin agreed to back an international ban on the use of the controversial weapons following 10 days of talks.
ダブリンで開かれている外交会議は、10日に渡る議論を経て、この異議の絶えない兵器の国際的禁止を推進することで合意した。

But some of the world's main producers and stockpilers - including the US, Russia and China - oppose the move.
しかし、クラスター爆弾の主要製造・備蓄国である米国やロシア、中国などはこの動きに反対している。

Prime Minister Gordon Brown called it a "big step forward to make the world a safer place".
ゴードン・ブラウン英首相は、会議で合意に達したことについて、「より安全な世界にしていくための大きな一歩」と評した。

He announced earlier that Britain would be taking cluster bombs out of service.
ブラウン首相は、前から、英国がクラスター爆弾を廃棄する意向を示していた。

The final draft of the treaty went before delegates from a total of 109 countries on Wednesday afternoon.
条約の最終案は水曜日の午後に、109カ国すべての代表に示された。

'Bomblets'
「子爆弾」


Cluster bombs have been used in countries including Cambodia, Kosovo, Afghanistan and Lebanon.
クラスター爆弾は、カンボジア、コソボ、アフガニスタン、レバノンなどで使用された。

They are made up of a big container which opens in mid-air, dropping hundreds of smaller individual sub-munitions, or "bomblets", across a wide area.
クラスター爆弾は、空中で開く大きな容器体と、そこから飛び出す何百もの別個の小型爆弾、いわゆる「子爆弾」から成り、子爆弾は広範囲に散らばる。

Countries like the US, India, Pakistan and Israel claim such munitions are highly useful on the battlefield, but opponents say that where the bomblets fail to explode they leave a deadly legacy for civilians.
米国やインド、パキスタン、イスラエルなどの国は、クラスター爆弾は戦闘地域において、とても有効な兵器であると主張する。しかし、クラスター爆弾反対派は、子爆弾が不発弾として残れば、クラスター爆弾が使用された地域で暮らす文民にとって致命的な負の遺産となると反論している。

During the conference, delegates have heard first-hand accounts from survivors of cluster bomb attacks.
会議では、参加者は、クラスター爆弾の被害者から直接意見を聴取した。

Speaking at Downing Street earlier, Mr Brown said: "I am delighted that the negotiations in Dublin have come to a successful conclusion and congratulate the Irish Government and all those involved.
ブラウン首相はダウニング街で早々に演説し、「ダブリンでの交渉が成功裏に終わったことを嬉しく思う。アイルランド政府と会議に関与したすべての当事者に祝福を送りたい」と述べた。

"I am confident that this agreement is in line with British interests and values, and makes the world a safer place."
また、ブラウン首相は「会議で達した合意は、英国の国益と価値に沿うものであり、世界をより安全な場所にしていくものであると確信する」と語った。

The BBC's Paul Adams said he understood the agreement would outlaw the two types of cluster munitions currently held by UK forces, but would not prevent countries from developing future generations of weapons based on the concept of sub-munitions.
BBCのポール・アダムス記者は、今回の合意は、英軍が現在保有している二種類のクラスター爆弾を違法とするものであるが、子爆弾をめぐる考え方を踏まえて生産される将来の兵器の開発が禁じられたわけではないと解説する。

And he said it appeared the UK hoped other countries not present in Dublin, notably the US, might be persuaded to accept the treaty later.
さらに、アダムス記者は、英国は、ダブリンでの会議に参加していない国、中でも米国が、後に条約への参加を促されることになるかもしれないと期待しているようだと述べている。

Using British soil
英国国土の利用


One stumbling block for the treaty could be the stockpile of cluster munitions the US military keeps at bases on British soil.
クラスター爆弾禁止条約の障害の一つは、英国の米軍基地に備蓄されているクラスター爆弾だろう。

The British representative in Dublin, John Duncan, said the UK would work with Washington to find a solution to the issue.
ダブリン会議に参加した英政府代表のジョン・ダンカン氏は、英国はこの問題の解決策を見出すため、米政府と協力していく必要があるだろうと述べた。

But in a statement, the Pentagon stood firm, saying: "While the United States shares the humanitarian concerns of those in Dublin, cluster munitions have demonstrated military utility, and their elimination from US stockpiles would put the lives of our soldiers and those of our coalition partners at risk."
しかし、米政府が発表した声明では、「米国はダブリン会議で強調された人道的懸念を共有する。一方で、クラスター爆弾の軍事的有用性は実証済みであり、米国が備蓄するクラスター爆弾を廃棄することは、我が国と同盟国の兵士の命を危険にさらしかねない」と述べ、頑強な姿勢を崩していない。

Some campaigners do believe countries like the US will change, however. They cite the landmine treaty of 1997 that was never signed by the US, Israel, Russia or China, yet those nations have not used landmines since it came into effect.
とはいえ、クラスター爆弾の禁止に向けた運動を展開した者の中には、米国のような国も姿勢を改めるだろうと信じる者もいる。彼らは、米国やイスラエル、ロシア、中国は、1997年の対人地雷全面禁止条約に参加しなかったが、同条約の発効以来、対人地雷を使用することはなかったとの事実を引き合いに出す。

Simon Conway, from the Cluster Munitions Coalition, said there would now be "massive" pressure on the US.
「クラスター爆弾連合」のサイモン・コンウエイ氏は、今や、米国に対して「重圧」がかかっていると述べる。

"We think now that all of America's key allies have just renounced the weapon it will be very difficult for the US to engage in operations with countries who have banned this weapon and continue to use them," he said.
コンウエイ氏によると、「米国の主要な同盟国のすべてがクラスター爆弾を廃棄するとなれば、今や米国は、クラスター爆弾を禁止した国との軍事作戦への関与が困難になり、クラスター爆弾の使用継続も難しくなるだろう」という。

Liberal Democrat foreign affairs spokesman Ed Davey said the prime minister must make clear whether he would continue to allow the US to store its own cluster munitions on British territory.
自由民主党の外交担当報道官である、エドワード・デイベイ氏は、ブラウン首相は、米国の英国領でのクラスター爆弾の備蓄を許容し続けるつもりなのかどうか、立場を明らかにすべきであると語る。

"If he is serious about ending the scourge of these weapons, he must bring this abuse of the 'special relationship' to an end," Mr Davey said.
さらに、デイベイ氏は「もし首相がクラスター爆弾がもたらす惨劇を終わらせたいと真剣に考えているのであれば、『特別な関係』の乱用にこそ終止符を打つべきだ」と述べる。(了)

…さて、日本はどうするのやら
と思っていたら、以下のような報道がありました。
日本のこういう情けない後出しジャンケン対応は
もう、いい加減にしてほしいね。

結局、クラスター爆弾禁止に向けた国際的な規範づくりに
日本は何ら貢献しなかったという事実に変わりはない。



<クラスター爆弾>日本、全面禁止条約案に同意
 5月30日2時31分配信 毎日新聞
 政府は29日、軍縮交渉「オスロ・プロセス」のダブリン会議が合意したクラスター爆弾を事実上即時全面禁止する条約案について、同意する方針を決めた。条約案は30日に採択される。政府は条約案への具体的な賛否を明らかにしていなかったが、福田康夫首相の意向を受け、人道問題の観点から受け入れに傾いた。

 政府筋は29日夜、「オスロ・プロセスに参加していない米国との調整もついた」と語り、ダブリン会議に出席している日本首席代表の中根猛・外務省軍縮不拡散・科学部長(大使)にも受け入れ表明を指示したことを明らかにした。 町村信孝官房長官は同日午後の記者会見で「条約案が合意されたとは理解していないが、政府としても態度を決めなければいけない」と表明。政府は条約案への対応を巡り、大詰めの協議を進めていた。

 クラスター爆弾の禁止について、政府は「人道問題と日本の安全保障のバランスを勘案して態度を決める」と説明。条約案に反対し、オスロ・プロセスに参加していない米国との同盟関係に配慮し、条約加盟への意思表示を12月の署名時まで先送りすることも検討していた。

 しかし、首相は23日、首相官邸を訪れた公明党の浜四津敏子代表代行が全面禁止を求めたのに対し、「もう一歩踏み込んだ対応が必要。お任せいただきたい」と述べ、条約賛成への政治決断の可能性を示唆。関係各省庁に前向きの対応を指示した。 首相が同意を決断したのは、英仏独などの主要国が相次いで首脳の政治決断で条約案受け入れを表明したことが大きい。日本の国際的孤立を回避し、7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)議長国として、指導力をアピールする狙いもあるとみられる。【白戸圭一】

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