今日は、ダライ・ラマ14世が日本で記者会見を開くなど
チベット問題が国際的な注目を集めています。
エディは、ダライ・ラマによる抵抗が
宗教者としてあるべき、節度あるものなので
好印象を持っています。
一方で、ダライ・ラマは西欧諸国に働き掛けることで
チベット問題をめぐり中国に外圧をかけるという
手法を取り続けていましたが
ダライ・ラマがこうした手法を取り続けても
中国から引き出せる妥協は
何もないというころまで来ているとの指摘もあります。
手詰まり感のあるダライ・ラマにチベット現地は業を煮やし
穏健策よりも、暴動の方が実効的だと
考えているチベット人もいるのではないかという印象です。
ニューズウィーク誌がダライ・ラマにタイムリーな独占インタビューを
行っていますので、紹介してみます。
訳してみて…、ダライ・ラマと中国の対話が実現してほしいと切に思いました。
中国共産党の価値観が極めて俗物的なので
ダライ・ラマと理念を共有するのは、なかなか難しいことだとは思いますが。
もしダライ・ラマと理念が共有できれば
事態は必ず好転すると思います。
Fears and Tears
不安と悲嘆
In an exclusive interview, the Dalai Lama talks to NEWSWEEK about the violence in Tibet, his vision of the future—and how he manages to sleep in spite of his distress over the killings.
ニューズウィーク誌がダライ・ラマ氏に独占インタビュー。チベットでの暴動、将来の展望、チベットの人民が殺害されていることに対して苦悩しながらも、いかにして睡眠を確保しているのかなどに至るまで語ってもらった。
Melinda Liu and Sudip Mazumdar
Newsweek Web Exclusive
Updated: 1:18 PM ET Mar 20, 2008
URL: http://www.newsweek.com/id/124365
© 2008
As news spread of massive Chinese troop movements into Tibet, and of hundreds of arrests, Chinese Premier Wen Jiabao told British Prime Minister Gordon Brown he was willing to talk with the exiled Tibetan leader the Dalai Lama if he renounced violence and gave up the idea of an independent Tibet—conditions the Dalai Lama has met with past statements. During an exclusive, wide-ranging 45-minute interview with NEWSWEEK's Melinda Liu and Sudip Mazumdar at the headquarters of the Tibetan government-in-exile in Dharamsala, India, the Dalai Lama talked about his willingness to negotiate with Beijing, his fears for the future, and how some government officials in China have sent him private messages of sympathy. Excerpts:
中国軍の部隊が大量にチベットに移動したり、何百人ものチベット人が逮捕されたりしている様子がニュースで流れた。温家宝首相はゴードン・ブラウン英首相と対談し、チベット亡命政府の指導者、ダライ・ラマ氏と対話する意思があることを表明した。ただし、温家宝首相は、ダライ・ラマ氏が、暴力行為とチベットの独立構想を放棄しなければ、対話には応じないとも述べた――暴力行為と独立構想の放棄については、いずれもすでにダライ・ラマ氏が過去の声明の中で言及していることである。ニューズウィーク誌のメリンダ・リウとスディップ・マズマダルの両記者が、インド北部のダルムサーラにあるチベット亡命政府の本部でダライ・ラマ氏に45分に及ぶ独占インタビューを行った。インタビューに応じてくれたダライ・ラマ氏は、中国政府との交渉の意思や将来への不安をはじめ、中国の政府関係者の中には、ダライ・ラマ氏に共感する内容の私的メッセージを送ってくれている者もいることなどについて語ってくれた。
NEWSWEEK: Do you think Chinese officials still hope their problems in Tibet will disappear after you pass away?
ニューズウィーク誌:中国政府は依然、あなたがいなくなれば、チベットでの懸案はなくなると考えていると思いますか?
The Dalai Lama: I don't know. I totally disagree with the view that the Tibet struggle will die, and there will be no hope for Tibet, after the Dalai Lama passes away. Both inside and outside [Tibet], the older generation may go away, but the newer generations carry the same spirit. Sometimes it's even stronger. So after my death a younger generation will come up.
ダライ・ラマ:分からない。チベットから闘争が消えてなくなるという考え方にはまったく賛同できない。それに、私が死ねばチベットに希望はない。チベットの内外ともに、古い世代の者たちはいなくなってきているだろう。しかし、新しい世代は(古い世代と)同じ精神を引き継いでいる。しかも、新しい世代が引き継いだ精神は、ときに古い世代よりも強いことさえある。だからこそ、私が死ねば、若い世代はきっと立ち上がるだろう。
If Wen Jiabao or [China's President] Hu Jintao were sitting in this room in front of you, what would say to them?
ニューズウィーク誌:もし温家宝首相、あるいは胡錦涛・国家主席があなたの目の前に座っていたら、何と言って聞かせますか?
I always like to quote Deng Xiaoping and say, Please seek truth from facts. It is very important. I would urge them to find out what is really going on in Tibetan minds and what is happening on the ground. This I want to tell the prime minister, Wen Jiabao, if he were to come here. Of course, I have great respect for both, particularly Wen Jiabao. He seems very gentle. I would also ask him, "Please prove your recent accusations [that the Dalai Lama instigated the unrest in Tibet.]" [Laughs]
ダライ・ラマ:私は常々、鄧小平の言葉を借りて、こう言いたいと思っている。「事実から真実を探求せよ」と。これはとても重要なことだ。チベット人の心の中で実際に何が起こっているのか。そして、チベットの地で何が起きているのか。お二方に分かっていただけるよう説得したいと思っている。もし、温家宝首相がここに来られることがあるのならば、このことを言いたい。もちろん、私はお二方、特に温家宝首相を大いに尊敬しております。彼はとても紳士的に見えますし。温家宝首相にはこのことも聞いてみたい。「(ダライ・ラマがチベットでの暴動を煽っていると)最近あなたは告発していたようですが、その罪状を立証してみてください」と(笑)。
Do you have back channels of communication to the Chinese leadership?
ニューズウィーク誌:あなたには中国の指導者層と意思疎通を図るための裏経路があるのではないでしょうか?
Not serious [ones]. The usual channels are still there.
ダライ・ラマ:そんな特殊なものはありません。通常の意思疎通経路なら今でもありますよ。
Do new technologies—cell phones, digital photography, e-mail and so on—make it harder for authorities to control the unrest?
ニューズウィーク誌:携帯電話やデジタル画像、eメールなどの新しい技術が、中国当局による暴動の取り締まりを困難にさせているのではないでしょうか?
Oh, yes.
ダライ・ラマ:そう思います。
Do they make it impossible?
ニューズウィーク誌:それらの技術が、暴動の取り締まりを不可能にさせていると?
Now authorities are trying to control [things] by shutting down these services. But it is very difficult to control everything.
ダライ・ラマ:現在、中国当局はそうした新しい技術を提供するサービスを閉鎖するなどして規制しようとしています。が、すべてを規制するのは極めて難しいことでしょう。
What's the difference between what's happening now and the turmoil of the late '80s in Lhasa?
ニューズウィーク誌:1980年代後半にチベットの首都ラーサで起きた争乱と現在の暴動の違いは何なのでしょうか?
At that time it was mainly in Lhasa areas. And, yes, it is a factor that images can be seen elsewhere. But it is mainly the [extent of Tibetan] grievances. Today even Tibetan monks in Chinese areas carry Tibetan flags. I am quite surprised [by the prevalence of Tibetan dissatisfaction in areas far from Lhasa]. Now the entire Tibetan people have strong feelings. If [Chinese authorities] truly treated the Tibetans as brothers and sisters and as equals, giving them trust, then this would not happen.
ダライ・ラマ:当時、抗議運動は主にラーサで展開されていました。イメージとしては、抗議運動が他の場所でも行われているように見えたでしょうが、チベット人の抗議運動の広がりには限界がありました。しかし今日では、中国側の地域で暮らすチベット僧ですら、チベットの旗を掲げています。ラーサからはるか遠く離れた場所で、チベットの抗議運動の広がりが見られることは非常に驚くべき事態です。今では、すべてのチベット人が強い反感を持っています。もし中国当局がチベット人を兄弟・姉妹として平等に扱い、チベット人からの信頼を勝ち得ているなら、暴動は起きません。
Even privileged Tibetans who are in elite minority universities in Chinese cities such as Beijing and Lanzhou have organized vigils and peaceful protests. Why?
ニューズウィーク誌: 北京や蘭州のような中国の都市にある少数派のエリートが通う大学に在籍する、特権を認められたチベット人でさえ、デモを組織し、平和的な抗議運動を展開しています。なぜでしょうか?
Yes, yes—if they're not satisfied you can imagine how nomads feel. I occasionally meet affluent Tibetans who are economically sound, who have good housing. I met one such person who first told me he had no worries. Then he confessed [he felt] mental anguish, and then he began to cry. As Tibetans they feel some kind of subtle discrimination by the Chinese.
ダライ・ラマ:あなた方が想像するほど、彼らは満足していないということですよ。私は、経済的に恵まれ、立派な家を持つ、お金持ちのチベット人ともよく会います。私は以前、心配事は何もないと最初は語っていた、あるチベット人と会いました。しばらくすると、彼は精神的な苦悩を告白し始め、ついには泣き始めたのです。チベット人である彼らは、中国人によるある種の巧妙な差別を感じ取っているのです。
Are you worried about the possibility of greater violence after you pass away?
ニューズウィーク誌:あなたの死後、大規模な暴動が起きるのではないかと心配ではありませんか?
Yes, I worry about that. As long as I am alive, I am fully committed to amity between Tibetans and Chinese. Otherwise there's no use. More importantly, the Tibetan Buddhist cultural heritage can eventually help bring some deeper values to the millions of Chinese youth who are lost in a [moral] vacuum. After all, China is traditionally a Buddhist country.
ダライ・ラマ:はい。心配しています。私は一生、チベット人と中国人の友好に、この身を全て捧げていく。それ以外は、無駄な努力でしかない。より重要なこととして、チベット仏教の文化的遺産は、最終的に、道義的空白状態にある中国人の若者たちに、より深い価値観をもたらす一助になり得るということがあります。結局、中国は伝統的に、仏教徒の国なのです。
What more do you think the Chinese leadership wants you to do to prove your sincerity? Wen Jiabao wants you to accept two conditions—that you renounce Tibet's independence and renounce violence—before dialogue can take place.
ニューズウィーク誌:中国の指導者層があなたにもっと誠意を見せてほしいと言っていることについて、もっと何か考えていることはあるでしょうか?温家宝首相は、対話の前提条件として、あなたにチベットの独立と暴力行為を放棄するよう求めていますが。
Last year in Washington we had a meeting with some Chinese scholars, including some from mainland China, who asked me, "What guarantee is there that Tibet will not be separate from China ever [in the future]?" I told them that my statements won't help, my signature won't help. The real guarantee is that the Tibetan people should be satisfied. Eventually they should feel they would get greater benefit if they remain with China. Once that feeling develops, that will be the real guarantee that Tibet will forever remain part of the People's Republic of China.
ダライ・ラマ:私は、昨年、中国人の学者と一緒にワシントンで会議を開きました。中には、中国本土から来た者もいました。中国人の学者たちは、私に、「(将来的に)チベットが中国から分離しないという保証は何なのか」と尋ねてきた。私は、私の声明や署名は保証にならないだろうと彼らに答えた。真の保証とは、チベット人が満足することだからです。結局、チベットが中国とともにあり続けるというのなら、そこからチベット人が大きな恩恵を受けているという実感を得られなければならない。そうした実感が得られるのなら、それこそまさしく、チベットが永遠に中国の一部としてあり続ける保証となるでしょう。
The Chinese government wants me to say that for many centuries Tibet has been part of China. Even if I make that statement, many people would just laugh. And my statement will not change past history. History is history.
ダライ・ラマ:中国政府は私に、もう何世紀も前から、チベットは中国の一部だったと言ってほしいと思っている。たとえ私がそうした声明を出したとしても、多くの人は一笑に付すだけだろう。だから、私の声明では過去の歴史は変えられないのです。歴史は歴史です。
So my approach is, don't talk about the past. The past is past, irrespective of whether Tibet was a part of China or not. We are looking to the future. I truly believe that a new reality has emerged. The times are different. Today different ethnic groups and different nations come together due to common sense. Look at the European Union … really great. What is the use of small, small nations fighting each other? Today it's much better for Tibetans to join [China]. That is my firm belief.
ダライ・ラマ:だから、私の提案はこうです。過去の話はするな。チベットが中国の一部であろうがなかろうが関係ない。過去は過去なのです。私たちは未来に目を向けています。私は、新たな現実が現れていると確信しているのです。時代は異なります。今日では異なる人種や民族が、共通の意識の下、手を取り合っているではないですか。EUをご覧なさい。本当に素晴らしい。手を取り合っているそれぞれの小さな民族が、お互いに喧嘩したりしていないでしょう。こういう時代なのだから、チベット人も中国人と手を取り合っていくことが、はるかに大切です。これが私の強い信念なのです。
You've said that two government officials sent private messages of support to you. Is there a significant number of officials in Tibet or other areas of mainland China who have shown sympathy to you in private?
ニューズウィーク誌:あなたは、二人の中国政府関係者から、あなたを支持するとの内容の私的なメッセージをもらったと仰っていましたね。チベットや中国の他の地域でも、あなたに共感している中国政府関係者は、かなりの数に及ぶと考えてよいのでしょうか?
Yes.
ダライ・ラマ:そうです。
How many?
ニューズウィーク誌:実際、何人いるのですか?
I am not sure, but many ordinary Chinese, thousands, have come here. And several senior officials have sent messages. I feel very strongly that there will be a change [in the attitude of the Chinese leadership]. Now the important thing is the Chinese public should get to know the reality. They should have more information about Tibet.
ダライ・ラマ:数は分かりませんが、たくさんの中国の一般民衆、それこそ何千人という人たちが、ここにやって来てくれました。何人かの中国の政府高官も、私にメッセージを送ってくれています。中国の指導者層の態度に変化が現れていると強く感じます。今や、中国政府が現実を知ることが重要になっています。そして、チベットについての情報ももっと得てほしい。
Will that be difficult? The Internet is heavily censored inside China. As a result, people tend to develop very polarized, often very nationalistic views.
ニューズウィーク誌:それは難しいことではないでしょうか?中国はインターネット上の情報を厳しく監視しています。結果的に、中国人は非常に偏った、ときに極めてナショナリスティックな考え方を持つ傾向にあります。
Yes, yes. You know, till 1959 the Tibetan attitude toward the Han Chinese was affectionate, very close, something normal. Chinese traders in Lhasa used to be referred to with affectionate respect. But, of course, the name of communism is feared in Tibet because of what happened in Mongolia, and to part of the Buddhist community in the Soviet Union. Then the Chinese communists entrenched themselves; more soldiers came and their attitude became more aggressive, more harsh. Even at that time we complained about these "bad communists," but we never said "bad Chinese." Never.
ダライ・ラマ:その通りだ。ご存じかもしれませんが、1959年まで、チベット人は漢民族に対して、親しみにあふれた、とても親密な態度で接していた。正常な関係にあったのです。ラーサで働く中国人商人についても、親しみと敬意の念とともに語られていました。ところが、共産主義の台頭がチベットを震え上がらせた。モンゴルやソ連の仏教徒のコミュニティに対して起きた出来事がありましたから。やがて、中国の共産主義者たちが自分たちを守ることに必死になり始めた。兵士がたくさんやって来るようになるにつれ、彼らの態度も攻撃的に、激しくなっていったのです。当時、私たちは「悪い共産主義者たち」を糾弾しました。しかし、「悪い中国人」と言った覚えはありません。断じてない。
During the last 20 years I have met a lot of Tibetans from Tibet—students, government officials and businessmen. They express great dissatisfaction. Now some of them refer to Chinese people in a derogatory manner. Even in prison there is a division between Chinese and Tibetan inmates. This I think is very bad. This must change. Not through harsh [measures]—that would just harden the stands—but by developing trust. I think real autonomy can restore that trust. As far I am concerned, I'm totally dedicated toward this goal. It is not just politics. My aim is to create a happy society with genuine friendship. Friendship between Tibetan and Chinese peoples is very essential.
ダライ・ラマ:ここ20年の間、私はたくさんのチベットの人たちと会ってきた。学生や行政官、ビジネスマンなど、様々なチベットの人たちとです。彼らは深く失望していた。中国人のチベットを見下した態度を指摘する人もいます。監獄の中でさえ、中国人の囚人とチベット人の囚人の間には、差別があるのです。これは、私はとてもよくないことだと思う。変えなければいけないことだ。お互いの態度を硬化させてしまうような激しい手段ではなく、お互いの信頼関係を発展させていくやり方で、変化を起こすのです。私は、真の自治とは、信頼を回復することだと思っています。このために私の身を全て捧げていきたい。政治のためだけじゃないのです。私が目指しているのは、本当の友情に支えられた幸福な社会を築いていくことなのです。チベットと中国の人たちの友情こそが重要なのです。
Some images of the recent casualties have been graphic and disturbing. Have you seen them? What was your reaction? We heard you wept.
ニューズウィーク誌:最近目にする犠牲者たちの姿は生々しく、不安になります。あなたは、犠牲者の姿を見たことがあるでしょうか。あなたはどう対応しますか。あなたが嘆き悲しんでいるとも聞きます。
Yes, I cried once. One advantage of belonging to the Tibetan Buddhist culture is that at the intellectual level there is a lot of turmoil, a lot of anxiety and worries, but at the deeper, emotional level there is calm. Every night in my Buddhist practice I give and take. I take in Chinese suspicion. I give back trust and compassion. I take their negative feeling and give them positive feeling. I do that every day. This practice helps tremendously in keeping the emotional level stable and steady. So during the last few days, despite a lot of worries and anxiety, there is no disturbance in my sleep. [Laughs]
ダライ・ラマ:はい。前は泣いていましたよ。けれど、チベット仏教の文化のよいところは、その知的平静さにあります。たくさんの混乱や不安、心配に直面したとしても、感情の奥底では平静でいられるのです。仏教徒として、私は毎晩、相互扶助をどう実践していけばよいのか考えています。私は、中国が私に対して抱いている疑念についても真正面から受け止めます。その上で、信頼と慈悲をお返しするのです。負の感情には正の感情をお返しする。私は毎日そうしています。この実践が、あるおかげで、感情に平静さと落ち着きを保つことができるのです。そうそう、ここ数日も、多くの不安と心配がありましたが、ちゃんと眠れていますよ(笑)。
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